25〜26日の二日間、千葉市幕張にある市町村職員中央研修所(市町村アカデミー)において市町村長を対象とした特別研修が行われました。
内容が濃いので4つの講座ごとに分けてお伝えしたいと思います。
初めに紹介する講師はNHKで30年間ディレクターを務め、その後、番組プロデューサーとして番組づくりをしてこられ、現在はNHKエデュケーショナル事業推進室で専任部長を務めている尾関憲一さんです。
と云っても、どのような人かは、ほとんど知らない人の方が多いかと思いますが、あの“ブラタモリ"をプロデュースした方といえば、顔が分からなくても何となく親近感が湧くのではないでしょうか。
尾関さんは“お母さんと一緒などの番組も手がけられたとの事で、主に生活や健康などをテーマとした番組を制作してこられたとのことです。
彼は、群馬県出身で早稲田大学で教育を学び、就職でNHK本局に就職し、二年目に地方局を希望して青森に配属されたそうです。東北弁の言葉が分からなくて取材後に同僚に聞きながら番組を作って行ったそうです。
そんな折、各地区に面白いものがあると気が付き、それを題材にした番組を作ろうとし、その一つとして取り上げたのが、青森のある地域では地区ごとに凧揚げがあり、それを作っていく過程を追って番組を作ろうと密着した取材を始めたとの事。
地元の人にとっては、いつも毎年やっている事で、特に変わったことをやっているという感覚は無かったそうですが、地域の人たちが力を合わせ、時には隣の地区が何を作っているか偵察に行くという事も取り上げて最後の凧揚げまで一つの番組で放映したところ、地元で大変な反響があったとの事でした。
このように外部目線で見た時に「自分が面白い」と思ったことは面白い、視聴者に見てもらえると思ったそうです。
また、青森には「カミサマ」という人が地区にそれぞれ実在していると聞き取材したそうです。「カミサマ」はいわゆる神道に通じるようなものでなく、地区で結婚や困った事、家庭のことなど何でも相談屋みたいな人だそうです。これはその地の人にとっては当たり前なんですが、他のところの人にとっては何とも面白い伝承と映るんでしょうかこれも結構反響があったそうです。
程なくして本局に戻った彼は、変な趣味を持つ人を追う番組をづくりしようと思いました。それはちょうどブログが流行ってきた頃と一緒で、そうした個人的な趣味を積極的に発信していこうとする時期と重なったとの事でした。
物事に熱中する人に焦点に絞った番組では、通学で通ったバスの「きゅういち」をこよなく愛してしまった女子高生、毎日利用しているバスを愛してしまったが故に卒業後も「きゅういち」を運行している路線沿いの会社に就職し、「きゅういち」が廃車するという事を聞くとそれを買い取って自家用車としてしまったという番組をビデオで紹介しました。
また、50年間、海岸でひたすら海藻集めをし、標本にしている夫婦を取り上げた番組では、そこから海岸の環境の移り変わりなどが見えてきたと感想を述べていました。
どこにでもある階段に熱中する人、バスの降車ボタンに熱中する人、郵便局を巡り100円ずつ貯金し通帳に記帳して全国を回る姉妹など周りから見ると変に思う“オタク"を受け入れる文化が日本にはあると言っておられました。
現在も放映している「ブラタモリ」という番組のタイトルは、尾関さんが名付けたということでした。タモリさんは民放の昼番組の「笑っていいとも!」を長くやっていて、どちらというとお笑い系の印象があるんですが、実は町を歩いて学んでいる博学の一面があり、それを取り上げた番組づくりをしたいという事で企画を提案したところ、当初は視聴者にそんな番組受けるのかなど疑問があったそうです。
ブラタモリには「観光地には行かない」、「店歩きはしない」などのルールが当初からあるということで、企画として筋書きは書くが、タモリさんと女性アナには伝えていないそうです。伝えるのは「何だろうと思う事があれば云って下さい」だけだそうです。
女性アナにも事前に伝えていないため、視聴者からは「何であの女性アナは何も知らないんだ」、「NHKの女性アナは賢くないのか」というような声もあったという事です。アナウンサーにとって事前の情報が無いというのは相当な不安だそうですが、一視聴者の目線で一緒になっていることでタモリさんとの掛け合いにより番組が視聴者の皆さんに受け入れられたのではと話されてました。
面白いものを摘み上げ、 専門家目線だけでないもので見るとそこから見えてくるものがあると話されました。
最近は全国各地から講演のオファーがあるとの事で、特に土木関係からの反響や地域おこしなどへのテーマでの依頼が多いと仰っていました。
テレビ制作の裏側など本当にあっという間の一時間半でした。
△講師の写真やビデオ撮影は残念ながら禁止でしたので、市町村アカデミー建物の様子をお伝えします。