砂防の願い(木曽南部直轄砂防現地視察)

大屋誠

2024年02月10日 08:21

 8日午後から国土交通省多治見砂防国道事務所が大桑村、南木曽町で進めている直轄砂防事業地を視察しました。
 木曽南部直轄砂防推進協議会では毎年この時期に現地視察を行なっています。近年の梅雨前線や大型台風の豪雨などによって引き起こされる土砂災害は住民からの関心も高まって来ています。
 しかしながら、実施している場所が居住地から離れている山あいの所が多く人の目につきにくい所が多く住民の目に触れる機会は少ないと思います。
 そういう中にあって今回の二箇所の視察地は国道や住家も近いところでした。
△大桑村役場に集合して出発




 この日は森下多治見砂防国道事務所長さん他職員の皆さんと木曽南部直轄砂防推進協議会の構成員である大桑村、南木曽町、王滝村、上松町の職員とネットワーク議連の議長さん方が参加しての視察でした。
 一ヶ所目は大桑村野尻地籍で進められている下在(しもざい)砂防堰堤工群のうちの宮の沢堰堤工の現場です。この現場も含め4箇所この地域では計画されているとのことですが、堰堤の下には国道19号が走っており、また直下には住家が密集し更にはJR中央本線が走っています。
 木曽南部直轄砂防事業地の特徴としては下流に住居があること、主要幹線である国道19号とJR線とほぼ直角に交差する所にあり、もし土石流が発生すると住民の生命が危険に晒されるだけでなく、更には長野方面と中京圏を結ぶ経済や人の流れの大動脈に大きな影響を及ぼすことになります。
△宮の沢堰堤(真ん中が流木を抑えて土石流のエネルギーを減少する鋼管が入っています。=スリット型構造と言います)




 下在工群堰堤の工事は現在今回視察地の宮の沢の他2箇所(蛇抜沢、深沢)で完成、或いは着工しており、中河原沢が現在検討中との事でした。
 次に向かったのは、南木曽町の和合蛇抜沢沈砂地工の現場です。南木曽町においては過去幾度となく土石流災害に見舞われています。これは南木曽町の市街地のすぐ上部に小さな渓流を有する急峻な山が迫っており、かつ南木曽岳(標高1679m)がその後ろにあり、その上昇気流が集中豪雨をもたらすと聞いたことがあります。
 私自身も南木曽の豪雨を体験したことがありますが、“白い雨“と言われる豪雨は車のワイパーが浮き上がる感じで慌てて停車した体験があり、雨の多い木曽で育った私でも恐怖を感じる降り方でした。
 南木曽の事業地は名前も『蛇抜沢』の名の通り土石流が過去に発生した所です。直下には先に視察した大桑村野尻下在と同様に住家、JR、国道が走っています。
△和合蛇抜沢沈砂地




 この沈砂地工は工事現場の上で大きく沢が左に迂回した流れになっており、もし土石流が発生した時にはそのエネルギーはまっすぐ来るのでそれに対応するものとお聞きしました。
 今回の視察で感じたことは地図上で見るのと実際に現場で見るとでは距離感がより近く、また実際に起こった場合には避難するには時間が限られると感じました。そうした時にこうした工事が進められている事に安全な上に安心が成り立っている事を改めて認識いたしました。
 



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