伊勢神宮式年遷宮御杣始祭に向けての講演会(その2)

大屋誠

2025年04月18日 15:37

 宮川清彦さんの講演に続いて地元木曽町日義の倉本豊さんから『奉仕者としての経験談』と題して講演がありました。
△倉本さんの講演


 倉本さんは、木曽町日義(旧日義村)の出身で上松技術専門校建築科を修了して大工となりました。御杣始祭で伐倒する伝統的技法である“三ツ紐伐り”を守る保存会に入るきっかけとなったのは、前々回の時に伝統的な技法が失われるということから保存会を立ち上げてその会員募集が目に留まってからだそうです。
 大工として木に携わっているものの、それは角材であり、他の会員の皆さんは丸太の原木を扱う山林関係者ばかりで最初は『場違いかな〜』と思っていたそうです。
 そして伐倒に使う“斧(ヨキ)”がまず無かったので探して、御柱祭で同じ様に御神木を伐り出す諏訪大社の近くの金物屋さんを訪ねたそうです。
 その話の中で三ツ紐伐りの技法を伝えていく事もむろん大事だが、使う斧を作っている所がほとんど無く、そうした事も受け継いで行かなければならないと話していました。
 また、伐る時には右利きの人は斧の先側を右手に持つ、これは『右ヨキ』、左利きの人は左手を先に持つのが『左ヨキ』という事を実際にヨキを持って熱演してくれました。
△熱のこもった講演


 そして三方向から3人で伐っていくが、同じ方向を向いて伐っていかないと隣の人の脚に当たる危険性があるので注意しなければならない、また、右方向ばかり向いていくとどうしてもヨキが当たる方向が偏ってしまいツルの部分が均一にならないので次は逆方向に切り進んで行かなければならないので杣夫は右でも左でもヨキを使えなければならないと経験者ならではの貴重なお話しをお聞きすることができました。
 また伐採後に行われる株祭りには、参加した一番若い杣夫が伐採後の切株に一番上の枝を刺して祀る。これは、伝統を引き継いでいく事を意味している儀式で、更に切り株は必然的に椀状になって水が一升くらい溜まり、そこにタネが落ちて母樹からの栄養を受けて次の時代に繋がるという事だそうです。
 また、木を伐る方向は谷側には倒さないというのが鉄則だそうで、もし谷側に伐り倒すと勢いが着き過ぎて材が割れてしまうそうで、伐った時には分からなくても製材した時に割れ目が出て来るそうです。
 ウ〜ン!!この辺りになると伊勢神宮最大の祭事ではあるものの、受け継がれて来た思想や技法の深さは現代にも通じるというよりも、日本版SDGSと感心しました。是非とも小中学生、大人の皆さんにも聞いていただきたいと思いました。
△株祭り


 こうした事を知り、伊勢神宮御杣始祭、更にはお木曳きの行事に参加すると楽しいでしょうね。
 皆さんも御杣始祭博士になってはいかがでしょうか?

 

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